京都の染め屋が作る筆ペン
岡重が筆ペンの販売を始めてから
約30年。
岡重 四代目 岡島 重雄が話す
筆ペンに掛ける思いと、筆ペンを使うタイミングとは?
「元々、墨文字が好きでした。特に筆ペンは、若い頃から好きでいつかは自分で筆ペンをプロデュースしてみたいという思いがありました。」
それは何年前?
「筆ペンを世に出したのが、今から約30年前。私が40代の頃です。当時から、OKAJIMAのバッグを含めて、様々な物作りにチャレンジしておりましたが、特にこの筆ペンは思い出深いです」
そもそも筆ペンを作ったきっかけは?
「きっかけは結婚式です。ウチの社員が、某文具屋さんの社員と結婚しましてねそこで同席した、役員の方に筆ペンに対する思いを話したら、トントン拍子で進み、その文具屋さんのボディを使って製作する事になりました。」
しかし、完成までに二年の歳月を要したとか。
「凝り性なもんで、いざ作ると、漆を塗ったり、蒔絵を施したりで、何度も漆工場に通って作り直しました。しかし、作り直してる内に気付いたら二年も経ち、いよいよリミットを決めて販売する事に。ですが拘り過ぎたお陰で、それ相応の上代金額になり、文具屋さんの方も、そんな高い筆ペン売れるわけがないと言われたのは淡い記憶です。」
今でこそ、馴染みのある上代設定ですが。。
「ええ、なのでその文具屋さんもこんな高い筆ペン、ウチのカタログには、よ〜載せられませんと言われてね(苦笑)」
※岡重の筆ペン、発表当時は¥6,800 。現在は資材高騰の影響もあり¥8,580〜(税込)名入れは+¥550(税込)
しかし、それが今や岡重の定番商品となったわけですね。
「出た当初は、高級筆ペンというイメージが、まだ一般的に受けず、思うように売れませんでした。ましてや、時代はどんどんデジタルに移行していく中で、作っている物は非常にアナログ。皆、便利さを追求していく中で、ウチは敢えて筆ペンに拘ったのが良かったのか、お陰様で、この30年で30万本程売れました」
特に反響の多かったところは?
「一番は 芸能関係のお土産物です。色々なご縁があり、東映の方に好意にして頂いてから様々な役者さんとも、この筆ペンを通じてお知り合いになる事が出来ました。勿論、他にも個人のお客様から企業のノベルティ(レクサスの新車発表や、某ハイブランドの新作発表など)等、多種多様です。特にウチの場合は桐箱に入って熨斗やラッピングは勿論の事、名入れも出来るので誕生日祝いや、就任祝い等でお求めになられる方が多いです」
ちなみに、ケースにも凄く拘っているとか
「無地以外の物は、更紗柄、縞更紗共にウチの絵師が描いてくれた物です。中には約100年前の図案もありますが、それらを京都の染色工場で型友禅の技法を用いて綿素材に染め上げた後に、扇子袋のデザインからインスピレーションを受けた形を元に製作しました。」
気に入っている所は?
「ペンをケースから出すまでの所作です。日本人の特性として昔から、畳んだり・巻いたりする行為が好きなんです。その動作が、非常に日本人の日々の丁寧な思想だなと常々思っております。単純にボタンでカチっとではなく、ペンをケースから取り出す瞬間も含めて、この筆ペンをバッグに忍ばせておくと、取り出す度に気持ちが高揚します」
文具と染色とは全くのジャンル違いと思いますが、どこか通ずる物はありますか?
「先程にも、お伝えしたように、日本人の持つ美的感覚は、少し手間暇が掛かることを、敢えて自分の生活に取り入れているという事だと思います。そこで生じる所作や、``間``は、やがて礼節に繋がり、美という物は、実は身近にあるものなんだったと、ふと感じる瞬間があります。物作りも一緒です、染めも様々な工程で様々な職人が、目に見えない所で手間暇を掛けてベストを尽くし、一つの物を作り上げる事。その結果、使う人の手に渡った時、心の琴線に触れて満足するという事が、物のジャンルの垣根を超えて通ずる物があると思いますし、我々はそれが友禅や染色の可能性に繋がると考えます」
最後に。
筆ペンで文字を書く楽しさを教えてください
「文字で、自分の思いを伝える時に最も抑揚が出るのが筆文字だと思います。それは、その人のその瞬間に考えてる思考や、思想、または焦燥感といった、その場の感情。それがダイレクトに表現出来るのが筆ペンの楽しさではないでしょうか。自分へのメモ書きでも、大事な人へのメッセージでも、今自分の気持ちを何か形にして表現したいのであれば、筆ペンは本当にお勧めします」
京都の染め屋が作った筆ペン
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